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『mn☆オールドタイマー』
オールドタイマーNo.91/12月号の巻頭特集は「ミゼット」。本誌創刊時、これが巻頭を飾るなんて、スタッフは誰も想像していなかった。ネタが尽きたわけではない。いまやイベントでの1番人気は、ハコスカでもフェアレディZでもなく、ダイハツのミゼットなのだ。


 みなさんは解体屋さんに行ったことがあるだろうか? 自リ法の関係で、最近は敷地内に一般人が入ることが難しくなってはいるが、機会があればぜひ見学してみてほしい。もちろん外からではなく間近で。私の場合、1日いても飽きることはなかった。そして少なからず衝撃を受けた。趣味生活に影響を与えたのも事実。環境問題といった大きな視点ではなく、もっとシンプルなインパクトがある。
 犯罪の多発、生命尊重意識の薄れなどには、生死の現場を家庭内から排除したことが影響しているという。すなわち病院で生まれ病院で死ぬようになり、人はその現場を遠ざけるようになった。また昔はゴミを家庭で燃やして処分していたが、いまは家の前に出しておけば勝手に収集車が持っていってくれる。日常生活のもろもろの出口は、家庭外に存在するのが当たり前になり、最終段階を目にすることはなくなった。
「まだまだ乗れる」と思わずにはいられないクルマが、目の前で、まさにゴミとして扱われていく。フォークリフトでガラスを突き破って吊り上げられ、サッカーボールのように振り回される。そしてクルマの上にクルマが積み上げられる。下のクルマはサスもタイヤもペチャンコに潰れ、屋根が歪む。数百万円もしたクルマとは思えないぞんざいな扱いだ。
 ここでは、部品を外すといっても酸素バーナーで切り刻むのが普通。少し前までは、グリスを塗ったボルトで丁寧に締緩されていたにもかかわらず。アーマーオールで艶出しされていたダッシュボートも、バキバキと無残に割られてしまう。
 エンジンや足まわりを外された車体はプレス機に入れられ、数十秒ほどで1m四方の鉄の塊に成り果てる。生活に貢献してきたモノが、その価値を奪われる瞬間を見て、何も感じない人はいないだろう。現在残存する旧車はどれも、この運命と紙一重である。
 最近は、子供の教育にトイレ掃除が見直されている。精神が穏やかになりいろいろなモノゴトへの感謝の気持ちが芽生えるからだという。人やモノの最期、出口を知ることは、意識変革を促す。解体屋さんに行くと、クルマ趣味も確実に変わる。


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